一〇一四五季直少将歌の事

現代語訳

  1. `昔、季直少将という人がいた
  2. `病になって後、少し持ち直したので、内裏に参上した
  3. `源公忠の弁が掃部助で蔵人だった頃のことである
  4. `乱れた心地は、まだよくなりませんが、心許無くて参上しました
  5. `後は知りませんが、これほどおりましたので、明後日頃に、また参ります
  6. `よろしくお伝え下さい
  7. `と帰っていった
  1. `三日ばかり後、少将のもとから
  2. `悔やまれる、後に会おうと契ったが、今日が最後と言えばよかった
  3. `そしてその日に亡くなった
  4. `あわれなる事のさまである