一〇(一四五)季直少将歌の事

原文

  1. `今は昔季直少将といふ人ありけり
  2. `病つきて後少しりて内に参りたりけり
  3. `公忠の弁の掃部助にて蔵人なりけるこの事なり
  4. `乱り心地まだよくも癒り侍らねども心もとなくて参り侍りつる
  5. `後は知らねどかくまで侍れば明後日ばかりにまた参り侍らん
  6. `よきに申させ給へ
  7. `とて罷り出でぬ
  1. `三日ばかりありて少将のもとより
  2. `悔しくぞ後に逢はんと契ける今日を限りと云はましものを
  3. `さてその日亡せにけり
  4. `哀れなる事のさまなり