(一四四)穀断の聖不実露顕の事

現代語訳

  1. `昔、長く修行を行う上人がいた
  2. `五穀を絶ってずいぶん経つという
  3. `帝がそれを聞き、神泉苑に呼び住まわせ、非常に貴んだ
  4. `木の葉だけを食べる
  1. `物笑いする若い公達らが集まり、その聖を確かめようと行ってみると、実に貴げに見えるので
  2. `穀を絶って、何年におなりですか
  3. `と尋ねたところ
  4. `若いときから絶っているので、五十年以上になりましょう
  5. `と言うので
  6. `穀絶ちの糞とはどのようなものだろう
  7. `普通の人とは違うのか
  8. `行って見てみよう
  9. `と言い、二・三人連れ立って行ってみると、穀糞の下痢の跡がたくさんあった
  10. `これはおかしいと思い、上人の出かけた隙に
  11. `床下を覗いてみよう
  12. `と言って、畳の下を開けてみれば、土を少し掘り、布袋に米を入れて置いてあった
  13. `公達はそれを見て手を叩いて
  14. `穀糞の聖、穀糞の聖
  15. `とはやし、大声で嘲笑うと、逃げて行ってしまった
  16. `その後は行方も知れず、暫く姿を現さなかったという