一 を踏むという事

現代語訳

  1. `を踏む
  2. `という手法は兵法に専ら用いられる件である
  3. `まず、大分の兵法にあっては、弓・鉄砲においても、敵がこちらへ打ちかけ何でも仕掛けてくるとき、敵は弓でも鉄砲でも放っておいてその後にかかってくることから、こちらがまた弓を使ったり、また鉄砲に火薬を込めたりしていては、かかって行くとき突入しにくい
  4. `弓でも鉄砲でも敵が放っているうちにはやくかかる感覚である
  5. `早くかかれば矢もえにくい
  6. `鉄砲も撃ち得ぬ感覚である
  7. `何か物事を敵が仕掛けたら、そのままそこに生ずるその利を生かして、敵のすることを踏み付けて勝つ手法である
  1. `また、一分の兵法も、敵の打ち出す太刀のへ打てば
  2. `とったん、とったん
  3. `となって行かぬところである
  4. `敵の打ち出す太刀は、足で踏み付ける感じで打ち出すところを打ち、二度目を敵が打ち得ぬようにすべし
  5. `踏む
  6. `というのは足には限らない
  7. `胴体でも踏み、心でも踏み、もちろん太刀でも踏み付けて、二度目を敵に打たせぬように心得るべし
  8. `これすなわち物事のの心である
  9. `敵と同時にといっても衝突するという意味ではない
  10. `そのまま後に付く感覚である
  11. `よくよく吟味あるべし