一 兵法に武具の利を知るという事

現代語訳

  1. `武道具の利を弁えていれば、いずれの道具でも、折に触れ、時にしたがい、用いる時機が訪れるものである
  2. `脇差は座の狭い所、敵の身際へ寄ったとき、その利が多い
  3. `太刀はいずれの所においても大抵役立つ利がある
  4. `薙刀は戦場では槍に劣るきらいがある
  5. `槍は先手である
  6. `薙刀は後手である
  7. `同じ位の腕前では、槍を持つ方は少し強く、槍・薙刀も、場合により、窮屈な所ではその利が少ない
  8. `立籠り者などにも具合が悪い
  9. `戦場専用の道具であろう
  10. `合戦の場では肝要な道具である
  11. `しかし、座敷においての利を覚え、些事にこだわり、実の道を忘れるにおいては、用いる好機は捉えにくいであろう
  1. `弓は、合戦の場において、駆け引きにも役立ち、槍の脇、その他様々な物の脇ではやく取って使うものであるから、野合すなわち平地における合戦などにとりわけよい物である
  2. `城攻めなど、また敵との間合二十間を超えては短所が出るものである
  3. `当世においては、弓は申すに及ばず、諸芸花多くして実少なし
  4. `そのような芸能は肝心なとき役に立ち難い
  5. `鉄砲はその利が多い
  6. `城廓の内部では鉄砲に勝るものはない
  7. `野合などにおいても、合戦の始まらぬうちはその利が多い
  8. `戦が始まっては短所が出てこよう
  9. `弓の一つの徳は、放つ矢が人の目に見えるのでよい
  10. `鉄砲の玉は目に見えぬところが短所である
  11. `この件をよくよく吟味あるべきである
  1. `馬のこと
  2. `強く、応えてまた堪えて、癖のないことが肝要である
  1. `総じて、武道具については、馬も大方歩け、刀・脇差も大方切れ、槍・薙刀も大方貫け、弓・鉄砲も、強く、壊れぬようにしておくべし
  2. `道具全般にも偏って好むことがあってはならない
  3. `余っているのは足らぬと同じことである
  4. `人真似をせずとも、己の身に従って、武道具は手に合うようにしておくべし
  1. `将・兵卒共に物に好き嫌いがあるのはまずい
  2. `工夫が肝要である