一二(一七一)寂昭上人鉢を飛ばす事

現代語訳

  1. `昔、三河入道寂昭という人が唐に渡って後、唐の王がやんごとない聖たちを召し集め、堂を飾り、僧膳を設けて、経典を講じたときのこと、王が
  2. `各々自分の鉢を飛ばし、食べ物を受けよ
  3. `本日の供養の座に配膳係は不要である
  4. `と仰せになった
  5. `その心は、日本の僧を試みるためである
  1. `さて、諸僧が一座より順に鉢を飛ばして食べ物を受ける
  2. `三河入道は末座に着いていた
  3. `その番になったので鉢を持って立とうとした
  4. `どうした
  5. `鉢を飛ばして受けよ
  6. `と、人々が制止した
  7. `寂昭は
  8. `鉢を飛ばすことは、別の法を行なってすることです
  9. `しかし、私はいまだその法を伝え行なっておりません
  10. `日本国においても、この法を行う人はいますが、末世には行なう人はなくなりました
  11. `どうして飛ばせましょう
  12. `と言ったが
  13. `日本の聖、鉢が遅い、鉢が遅い
  14. `と責めるので、日本の方に向い、祈念して
  15. `我が国の三宝・神祇お助けください
  16. `恥をお見せにならないでください
  17. `と念じ入っていると、鉢がまるでこまのようにくるくる回って、唐の僧の鉢よりも早く飛び、食べ物を受けて戻ってきた
  1. `その時、王をはじめ
  2. `やんごとない人だ
  3. `と、拝んだと申し伝えられている