一二(六四)式部大輔実重賀茂の御正体拝み見る事

現代語訳

  1. `これも昔の話、式部大夫・平実重は賀茂神社へ参ることにかけて並ぶ者がなかった
  2. `前世の運をおろそかにし、身に余るご利益ににあずかることはできなかった
  3. `ある人が夢で、賀茂の大明神が
  4. `また実重が来た
  5. `なにか言っているぞ
  6. `とお嘆きになっているのを見た
  1. `実重が御本体を拝み奉りたく祈ると、ある夜、下賀茂神社へ参詣の後、上賀茂神社へ参る間、二社の間にあった神社のそばで、行幸にお会いした
  2. `百官供奉は常のとおりである
  3. `実重が、傍らの藪に隠れて見ていると、帝の御輿の中に金泥の経典が一巻立て掛けられていた
  4. `その外題には
  5. `一称南無仏
  6. `皆已成仏道
  7. `と書かれていた
  8. `夢はそこで覚めたという