(五四)佐渡国に金ある事

現代語訳

  1. `能登国には、鉄という金属の素鉄という状態のものを採り、国守に献上する者が六十人いた
  2. `藤原実房という守の任期中、鉄採り六十人の御頭が
  3. `佐渡の国にこそ、金の花の咲く場所がある
  4. `と人に語っているのを守が伝え聞き、その男を呼んで、物を与えたりしてすかしながら尋ねれば
  5. `佐渡の国には本物の金があります
  6. `ある場所は見届けてあります
  7. `と言うので
  8. `では、行って採ってこないか
  9. `と言うと
  10. `遣わされるなら、行きましょう
  11. `と言った
  12. `では舟を用意しよう
  13. `と言うと
  14. `供はいりません
  15. `一艘の小舟と少しばかりの食糧をいただければ、行って、うまくいったら採って戻ります
  16. `と言うので、この言葉に任せ、人には内緒で、一艘の小舟と少しの食糧を用意させると、男はそれで佐渡の国へと渡った
  1. `一月ほどして、忘れた頃に、この男がふと現れ、守に目配せをすれば、守は心得、人伝には受け取らず、自ら出向くと、袖移しに黒ずんだ布に包まれた物を持たせたので、守は、それを重たげに引き下げて、懐へ入れ、戻って行った
  2. `その後、その金採りの男は、どこへともなく消え失せた
  3. `あちこち尋ねてみたが、行方も知れず、そのままになった
  4. `どう思って消え失せたのかわからない
  5. `金のある場所を訊かれるとでも思ったのか
  6. `と疑った
  7. `その金は千両ほどあったと語り伝えられている
  8. `そんなことから
  9. `佐渡の国には金がある
  10. `と、能登の国の者どもは語ったという