(三八)絵仏師良秀家の焼くるを見て悦ぶ事

現代語訳

  1. `これも昔の話、絵仏師良秀という者がいた
  2. `家の隣から火が出、風が吹き迫ってきたので、逃げ出し、大路へと出た
  3. `人に頼まれた仏画もあった
  4. `また、着物も着ていない妻子らも、家にいたままだった
  5. `それも知らず、ただ逃げ出たのをよいことに、道の向かいに立った
  6. `そして、すでに我が家に移り、煙や焔がくゆるまで、ずっと、道の向かいに立って眺めていると、たいへんだと人々が集まってきたが、少しも騒がない
  7. `どうした
  8. `と人が言えば、向かいに立ち、家の焼けるのを見て、頷きながら、ときおり笑った
  9. `なんとも得したものだ
  10. `これまでずいぶんと下手な描き方をしていた
  11. `と言えば
  12. `見舞いに来た者たちが
  13. `これはどうしことか、ああやって立ってるぞ
  14. `あきれたものだ
  15. `物にでもとり憑かれたか
  16. `と言うので
  17. `なんで物など憑くものか
  18. `これまで不動尊の火焔を下手に描いていた
  19. `今見れば
  20. `このように燃えるものか
  21. `とわかったのだ
  22. `これこそ儲けものだ
  23. `絵仏師の道を立てて、有名になるのに、仏さえよく描けば、百千の家だって建てられる
  24. `おぬしたちこそ、そんな能力もないなら、せいぜい物惜みなさるがいい
  25. `と言って、嘲笑って立っていた
  1. `その後
  2. `良秀のよじり不動
  3. `として、今人々はめで合っている