一四(四六)金渡

原文

  1. `すべてこの大臣は滅罪生善の御志深くおはしましければ
  2. `我が朝にはいかなる大善根を為置いたりといふとも子孫相続いて後世弔はれん事有難し
  3. `他国にいかなる善根をもして後世を弔はれん
  4. `とて安元の比ほひ鎮西より妙典といふ船頭を召し上せ人を遥かに退けて対面あり
  5. `金を三千五百両召し寄せて
  6. `汝は聞ゆる大正直の者なればとて五百両をば汝に得さす
  7. `三千両をば宋朝へ渡し千両をば育王山の僧に引き二千両をば帝へ参らせて田代を育王山へ申し寄せて重盛が後世弔はすべし
  8. `とぞ宣ひける
  1. `妙典これを賜はり万里の煙浪を凌ぎつつ大宋国へぞ渡りける
  2. `育王山の方丈仏照禅師徳光に逢ひ奉りてこの由申しければ随喜感嘆してやがて千両をば育王山の僧に引き二千両をば帝へ参らせて小松殿の申されつるやうを具に奏聞せられければ帝大きに感じ思し召して五百町の田代を育王山へぞ寄せられける
  3. `されば日本の大臣平朝臣重盛公の後生善所と祈る事今にありとぞ承る