一九 一 三つの声という事

現代語訳

  1. `三つの声
  2. `とは
  3. `初・中・後の声
  4. `といって
  5. `三つにかけ分けることである
  6. `時と所により声をかけるということが専一である
  7. `声は勢いであるから、火事などでもかけ、風・波でもかけ、声は勢力を見せるものである
  8. `大分の兵法にあっても、戦において初めにかける声は極力威圧する勢いで声をかけ、また戦う間の声は調子を引き下げて底から出る声でかかり、勝って後背後に大きく強くかける、これ三つの声である
  1. `また、一分の兵法にあっても、敵を動かすため、打つと見せて、頭から
  2. `えい
  3. `と声をかけ、声の後ろから太刀を打ち出すものである
  4. `また、敵を打ってに声をかけるものは勝ちを知らせる声である
  5. `これを
  6. `先後の声
  7. `という
  8. `太刀と同時に大きく声をかけることはない
  9. `もし戦の中でかけるとすれば、拍子に乗る声を引き下げてかけるのである
  10. `よくよく吟味あるべし