一三 一 うつらかすという事

現代語訳

  1. `うつらかす
  2. `というのは
  3. `物毎にあるものである
  4. `あるいは眠りなどもうつり、あるいは欠伸などもうつるものである
  5. `時がうつるというのもある
  6. `大分の兵法にあっては、敵がうわついて事を急ぐ心の見えるときは、少しもそれに構わぬようにして、いかにもゆるりとなって見せれば、敵も我が事のように受けてその気分になり、弛むものである
  7. `その
  8. `うつった
  9. `と思ったとき、こちらからの心にして、はやく強く仕掛けて勝利を得るものである
  10. `一分の兵法にあっても、己の身も心もゆるりとして、敵の弛みの間を捉えて、強くはやく先に仕掛けて勝つのが専一である
  1. `また
  2. `よわせる
  3. `といって、これに似ていることがある
  4. `一つは、無気力の心
  5. `一つは、浮かれる心
  6. `一つは、弱くなる心
  7. `よくよく工夫あるべし