(段)

原文

  1. `二刀一流の兵法の道
  2. `の巻
  3. `として書顕はす事
  4. `
  5. `と云心は物毎のなき所しれざる事を
  6. `
  7. `と見たつる也
  8. `勿論
  9. `
  10. `
  11. `なき
  12. `
  13. `有所を知りて無所を知る是則
  1. `世の中に於てあしく見れば物を弁へざる所をと見る所実のには非ず皆迷ふ心也
  2. `此兵法の道に於ても武士として道を行ふに士の法を知らざる所には非ずして色々迷有りてせんかたなき所を
  3. `
  4. `と云なれ共是実のにはあらざる也
  1. `武士は兵法の道をに覚え其外武芸をつとめ武士の行ふ道少しもくらからず心の迷ふ所なく朝々時々におこたらず心意二ツの心をみがき観見二ツの眼をとぎ少もくもりなく迷ひの雲の晴たる所こそ実のと知るべき也
  2. `実の道を知らざる間は仏法によらず世法によらずおのれおのれは
  3. `慥なる道
  4. `と思ひ
  5. `よき事
  6. `と思へ共心の直道よりして世の大かねにあはせて見る時は其身其身の心のひいき其目其目のひずみによつて実の道にはそむくもの也
  7. `其心をしつてなる所を本とし実の心を道として兵法を広く行ひ正しく明らかに大きなる所を思ひとつてを道とし道をと見るべき也
  1. `空有善無
  2. `智は有也
  3. `利は有也
  4. `道は有也
  5. `心は
  6. `正保二年五月十二日  新免武蔵
  7. `寺尾孫之丞殿
  8. `寛文七年二月五日  寺尾夢世勝延 花押
  9. `山本源介殿