一 兵法の身なりの事

原文

  1. `身のかかり顔はうつむかず あをのかず かたむかず ひずまず目をみださず ひたいにしはをよせずまゆあいにしわをよせて目の玉のうごかざる様にしてまたたきせぬ様に思ひて目を少しすくめる様にしてうらやかに見ゆるかほ鼻すぢにして少しおとがひを出す心也
  2. `首はうしろのすぢを直にうなじに力を入れて肩より総身はひとしく覚え両の肩をさげ背すぢをろくに尻を出さずひざより足先まで力を入て腰のかがまざる様に腹をはり
  3. `くさびをしむる
  4. `と云ひて脇差のさやに腹をもたせて帯のくつろがざる様にくさびをしむると云有り
  5. `総て兵法の身に於て常の身を兵法の身とし兵法の身を常の身とする事肝要なり
  6. `能々吟味すべし