二四(一五九)一条の桟敷屋鬼の事

現代語訳

  1. `昔、一条界隈の桟敷屋にある男が泊まり、遊女と寝ていると、夜中、風が吹き、雨が降って、凄まじい中、大路に
  2. `諸行無常
  3. `と詠じつつ通り過ぎる者がある
  4. `何者だろう
  5. `と思い、蔀を少し押し上げて見ると、軒と同じくらいの背丈の、馬の頭をした鬼だった
  6. `恐ろしくて、蔀戸に錠をかけ、奥の方へと退けば、この鬼が格子を押し上げて顔を差し入れ
  7. `よく見えましたねえ、見えましたねえ
  8. `と言うので、太刀を抜き
  9. `入ってきたら斬ろう
  10. `と構えて、女をそばへ引き寄せると
  11. `よくよくご覧なさいよ
  12. `と言っていなくなった
  13. `百鬼夜行であろうと、恐ろしくなった
  14. `それから一条の桟敷屋には、二度と泊まらなかったという