二四一五九一条の桟敷屋鬼の事
現代語訳
- `昔、一条界隈の桟敷屋にある男が泊まり、遊女と寝ていると、夜中、風が吹き、雨が降って、凄まじい中、大路に
- `諸行無常
- `と詠じつつ通り過ぎる者がある
- `何者だろう
- `と思い、蔀を少し押し上げて見ると、軒と同じくらいの背丈の、馬の頭をした鬼だった
- `恐ろしくて、蔀戸に錠をかけ、奥の方へと退けば、この鬼が格子を押し上げて顔を差し入れ
- `よく見えましたねえ、見えましたねえ
- `と言うので、太刀を抜き
- `入ってきたら斬ろう
- `と構えて、女をそばへ引き寄せると
- `よくよくご覧なさいよ
- `と言っていなくなった
- `百鬼夜行であろうと、恐ろしくなった
- `それから一条の桟敷屋には、二度と泊まらなかったという