一八(一五三)貧しき俗仏性を観じて富める事

現代語訳

  1. `昔、唐の田舎に一人の男がいた
  2. `家は貧しく宝もない
  3. `妻子を養う力もない
  4. `求めても得られなかった
  5. `そうして年月が過ぎた
  6. `思い悩んで僧に会い、宝を得るすべを尋ねた
  7. `知恵ある僧だったので
  8. `そなたが宝を得ようと思うなら、ただまことの心を起こすべし
  9. `そうすれば宝も増え、後世は良い所に生まれよう
  10. `と答えた
  1. `この人が
  2. `まことの心とはどのようなものですか
  3. `と問うと、僧は
  4. `まことの心を起こすというのは他でもない、仏法を信ずるにあり
  5. `と答えたので、また
  6. `それはどうすることですか
  7. `しっかり教わり、得心して、それを頼みに思い、二心なく信心し、お願いをします
  8. `教えてください
  9. `と言うと、僧は
  10. `我が心はこれ仏なり
  11. `我が心を離れては仏はなし
  12. `よって我が心の故に仏はおいでである
  13. `と言ったので、手をすり合わせ、泣く泣く拝み、それからこのことを心にかけて昼夜思えば、梵天、帝釈天をはじめ諸天が現れてお守りになったため、思いがけず宝が手に入り、家の中が豊かになった
  14. `臨終には、いよいよ心に仏を念じ入り、極楽浄土へすみやかに赴いた
  15. `このことを聞き見た人は、尊び愛したという