二七一伏見修理大夫許へ殿上人共行き向かふ事
現代語訳
- `これも昔の話、伏見修理大夫・橘俊綱のもとに殿上人が二十人ばかり押し寄せたので、にわかに騒ぎになった
- `肴などもとりあえず、沈香の机には季節の物いろいろ想像してもらいたい
- `杯が何度も傾けられると、各々は戯れ出た
- `厩に額の少し白い黒馬が二十頭つないであった
- `移鞍を二十具、鞍掛け台に掛けてあった
- `殿上人らは、酔い乱れて、各々この馬に移鞍を置き乗せて返した
- `翌朝
- `それにしても昨日は、えらいものだったな
- `と言い
- `では、また押し寄せよう
- `と言い、再び二十人が押し寄せれば、今度はそれなりの応対で、忙しい様子は昨日と変わり、炭櫃を飾った
- `厩を見れば、黒栗毛の馬を二十頭までつないであった
- `これも額が白かった
- `およそ、これほどの人はない
- `この人は宇治殿・藤原頼通の御子でいらっしゃる
- `しかし、御子がたくさんおいでだったが、当時、橘俊遠という世にも裕福な人がいた
- `その養子にさせて、こんな人になされたのだという