(七一)伏見修理大夫許へ殿上人共行き向かふ事

現代語訳

  1. `これも昔の話、伏見修理大夫・橘俊綱のもとに殿上人が二十人ばかり押し寄せたので、にわかに騒ぎになった
  2. `肴などもとりあえず、沈香の机には季節の物いろいろ想像してもらいたい
  3. `杯が何度も傾けられると、各々は戯れ出た
  4. `厩に額の少し白い黒馬が二十頭つないであった
  5. `移鞍を二十具、鞍掛け台に掛けてあった
  6. `殿上人らは、酔い乱れて、各々この馬に移鞍を置き乗せて返した
  1. `翌朝
  2. `それにしても昨日は、えらいものだったな
  3. `と言い
  4. `では、また押し寄せよう
  5. `と言い、再び二十人が押し寄せれば、今度はそれなりの応対で、忙しい様子は昨日と変わり、炭櫃を飾った
  6. `厩を見れば、黒栗毛の馬を二十頭までつないであった
  7. `これも額が白かった
  8. `およそ、これほどの人はない
  9. `この人は宇治殿・藤原頼通の御子でいらっしゃる
  10. `しかし、御子がたくさんおいでだったが、当時、橘俊遠という世にも裕福な人がいた
  11. `その養子にさせて、こんな人になされたのだという