一〇(四二)同人仏事の事

現代語訳

  1. `昔、伯の母が仏供養をした
  2. `永縁僧正を招き、さまざまな物を奉る中に、紫の薄様に包んだものがあった
  3. `開けてみれば
  4. `朽ちてしまった長柄ののりのためにも渡すものです
  5. `長柄の橋のきれであった
  1. `翌日まだ早いうちから若狭阿闍梨・覚縁という歌詠みがやって来た
  2. `なんと、もうこのことを聞いたのか
  3. `と僧正が思っていると、懐から名簿を取り出して奉り
  4. `この橋のきれをいただきたい
  5. `と言った
  6. `僧正は
  7. `これほどの希重なものをどうして差し上げられようか
  8. `というと
  9. `どうして彼女はくだされたのでしょう
  10. `口惜しい
  11. `と帰っていった
  12. `すきずきしく、あわれな話である