一四(一四)小藤太聟におどされたる事

現代語訳

  1. `これも昔の話、源大納言定房という人の家臣に小藤太という侍がいた
  2. `ほどなく女官と知り合い結婚した
  3. `娘もそこの女官として使われていた
  4. `小藤太は主の政務を執っており、三倍にも四倍にも館を広げるほどであった
  5. `その娘の女官ところへ良家の息子が通ってくる
  1. `夜に紛れて彼女の局に入りこんだ
  2. `夜明けから雨に降り籠められて帰れず、局でごろごろしていた
  3. `娘は出仕していった
  4. `婿どのは、屏風を立てめぐらして寝ていた
  5. `春雨はいつやむとも知れず降り、帰りようもなくてごろごろしていると、舅の小藤太が
  6. `婿どのも退屈しているだろう
  7. `と、肴を折敷に載せて持ち、もう片手にはひさげに酒を入れて
  8. `縁側から入っては見つかってしまう
  9. `と思い、奥の方からさりげなく持って行けば、婿どのは衣を被って仰向けになって寝ていた
  1. `彼女が早く帰ってくればいいのに
  2. `と、つれづれに思いつつ臥せっていると、奥の方から遣戸を開ける音がする
  3. `彼女が館から戻ってきたんだな
  4. `と思い、衣を顔に被せ、あれを引きずり出して、腹をそらし、しこしこと起てると、小藤太はたまげてのけぞり返った拍子に、肴を散らかし、酒もすっかりこぼし、大ひさげをささげて、仰向けにひっくり返ってしまった
  5. `頭を思いきりぶつけて目が眩み気を失ってしまったという