一七(一五二)鄭大尉の事

原文

  1. `今は昔親に孝する者ありけり
  2. `朝夕に木をりて親を養ふ
  3. `孝養の心空に知られぬ
  4. `梶もなき舟に乗りて向ひの島に行に朝には南の風吹きて北の島に吹き付けつ
  5. `夕にはまた舟に木を伐りて入りて居たれば北の風吹きて家に吹きつけつ
  6. `かくの如くするほどに年比になりて朝廷に聞し召して大臣に成して召しつかはる
  7. `その名を鄭太尉とぞいひける