(七三)範久阿闍梨西方を後にせざる事

原文

  1. `これも今は昔範久阿闍梨といふ僧ありけり
  2. `山の楞厳院に住みけり
  3. `ひとへに極楽を願ふ
  4. `行住座臥西方を後にせず
  5. `大小便西に向はず
  6. `入日を背に負はず
  7. `西坂より山へ登る時は身をそばだてて歩む
  8. `常に曰く
  9. `るる事必ず傾く方にあり
  10. `心を西方に懸けんに何んぞ心ざしを遂げざらん
  11. `臨終正念疑はず
  12. `となん云ひける
  13. `往生伝に入るとか