一五(六七)永超僧都魚食ふ事

原文

  1. `これも今は昔南京の永超僧都は魚なき限りは時非時もすべて食はざりける人なり
  2. `公請つとめて在京の間久しくなりて魚を食はでれて下る間奈島の丈六堂の辺にて昼破子食ふに弟子一人近辺の在家にて魚を乞ひてすすめたりけり
  1. `件の魚の主後に夢に見るやう
  2. `恐ろしげなる物どもその辺の在家をしけるに我家を註し除きければ尋ねぬる所に使の曰く
  3. `永超僧都に魚を奉る所なり
  4. `さて註し除く
  5. `と云ふ
  6. `その年この村の在家疫病をして死ぬる者多かりけり
  7. `この魚の主が家ただ一宇その事を免るるによりて僧都の許へ参り向ひてこの由を申す
  8. `僧都この由を聞て被け物一重給びてぞ返されける