日光

現代語訳

  1. `四月一日、日光山に参拝する
  2. `その昔、この御山を
  3. `二荒山
  4. `と書いたのを、勝道上人延暦年間に開山した折、
  5. `日光
  6. `と改められた
  7. `千年後の未来を予見なさっていたのだろうか
  8. `今、この徳川家康公を祀る東照宮の御光は一天に輝いて、恩沢はあまねく溢れ、人民安堵の暮らしは平穏である
  9. `なお、はばかることが多いので、筆を置いた
  10. `あら尊と 青葉若葉の 日の光
  1. `名も知れぬ万葉の人の歌ぬばたまの 黒髪山を 朝越えて 山下露に 濡れにけるかもなどに詠まれた黒髪山は、霞がかかって雪がまだ白く残っている
  2. `剃り捨てて 黒髪山に 衣更
  3. `曾良
  4. `曾良は、姓は河合、名は惣五郎という
  5. `芭蕉庵の近くに家があり、私の家事を手伝ってくれていた
  6. `この度、松島・象潟を眺めに共に行けることを喜び、同時に、旅の苦労をいたわってくれようと、旅立ちの朝、髪を剃って墨染の僧衣に姿を変え、
  7. `惣五
  8. `を改めて
  9. `宗悟
  10. `とした
  11. `それゆえ、黒髪山の句がある
  12. `衣更
  13. `の二字には力強さを感じる
  1. `二十町余り登ると滝があった
  2. `岩洞の頂から飛流し、百尺千岩の深碧の淵に落ちている
  3. `岩窟に身を潜めて入り、滝の裏から見ることから、
  4. `裏見の滝
  5. `と言い伝えられている
  6. `しばらくは 滝に籠もるや の初め