三十四五

原文

  1. `この比の能さかりのきはめなり
  2. `ここにてこの条々をきはめさとりて堪能になればさだめて天下にゆるされ名望を得つべし
  3. `しこの時分に天下のゆるされも不足に名望も思ふほどなくはいかなる上手なりともいまだまことの花をきはめぬ仕手と知るべし
  4. `しきはめずは四十より能はさがるべし
  5. `それ後の証拠なるべし
  6. `さるほどにあがるは三十四五までの比さがるは四十以来なり
  7. `返々この比天下のゆるされを得ずは
  8. `能をきはめたり
  9. `と思ふべからず
  10. `ここにてなほ慎むべし
  11. `この比は過ぎし方をおぼえまた行先の手立をもさとる時分なり
  12. `この比きはめずはこの後天下のゆるされを得んこと返々難かるべし