一〇(四二)

原文

  1. `さるほどに同じき五月十二日午の刻ばかり京中には夥しう吹きて人屋多く顛倒す
  2. `風は中御門京極より起つて坤の方へ吹いて行くに棟門平門を吹き抜いて四五町十町ばかり吹きもて行く
  3. `桁長押柱などは虚空に散在す
  4. `檜皮葺板の類冬の木の葉の風に乱るるが如し
  5. `夥しう鳴り響む音かの地獄の業風なりともこれには過ぎじとぞ見えし
  6. `ただ舎屋の破損するのみならず命を失ふ者も多し
  7. `牛馬の類数を知らず打ち殺さる
  1. `これ只事にあらず御占あるべし
  2. `とて神祇官にして御占あり
  3. `いま百日の内に禄を重んずる大臣の慎しみ別しては天下の大事仏法王法共に傾きて兵革相続すべし
  4. `とぞ神祇官陰陽寮共に占ひ奉る