現代語訳

  1. `二刀一流の兵法は、戦のことを火に見立てて、戦勝負のことを
  2. `の巻
  3. `としてこの巻に書き表すものである
  4. `まず、世間の人は誰しも兵法の利を小さく見做して、ある者は指先で手首五寸三寸の利を知り、ある者は扇を取って肘から先の先後すなわち遅速で勝つと弁え、または竹刀などで僅かにはやいことの利を覚え、手を利かせ習い、足を利かせ習い、少しの利の早いところを専一とするものである
  5. `我が兵法においては、数度の勝負に一命を賭けて打ち合い、生と死二つの理を見分け、刀の道を覚え、敵の打つ太刀の強弱を知り、刀の刃棟の道すなわち太刀筋を弁え、敵を打ち果たすところの鍛錬を得るのであって、小さい事や弱い事など思いも寄らぬところである
  6. `殊に六具すなわち六種一揃の武具に身を固めながら、どうして利に小さい事など思い出すことがあろうか
  7. `さらに、命懸けの打ち合いにおいて、一人して五人・十人とも戦い、その勝つ道を確実に知ることが我が道の兵法である
  8. `したがって、一人して十人に勝ち、千人を以て万人に勝つ、この道理に何の差があろうか
  9. `よくよく吟味あるべし
  1. `しかしながら、常々の稽古のときに千人・万人を集め、この道を仕習うことはできない
  2. `たとい独り太刀を取ろうとも、その敵その敵の知略を測り、敵の強弱や手の内を知り、兵法の知徳を以て万人に勝つところをきわめ、この道の達者となり、我が兵法の直道すなわち達成への最短の道は世界において
  3. `己の他に誰が得られようか
  4. `また
  5. `いずれがきわめられようか
  6. `と、しかと心に留めて、朝夕鍛錬して磨き上げて後、独り自由を得、おのずと奇特を得、神通力の不思議が起こるところ、これとして法を修行する息精すなわち心意気である