一 太刀の持ち様の事

現代語訳

  1. `太刀の取り様は、親指と人差し指を浮べ気味にして持ち
  2. `中指は締めず緩めず、薬指と小指を締める感じにして持つのである
  3. `手の内に余裕のあるのはまずい
  4. `敵を斬るものである
  5. `と思って太刀を取るべし
  6. `敵を斬るときも、手の内に変わりなく、手のまぬように持つべし
  7. `もし敵の太刀を、張ること、受けること、当たること、おさえること、があっても、親指と人差し指だけを少し変える感じにして、兎にも角にも
  8. `斬る
  9. `と思って太刀を取るべし
  10. `試し物などを斬るときの手の内も、兵法にして斬るときの手の内も
  11. `人を斬る
  12. `といって、手の内に変わるところはない
  1. `総じて、太刀でも手でも
  2. `居着くすなわち固着する
  3. `ということを嫌う
  4. `居着く
  5. `は死ぬ手である
  6. `居着かぬ
  7. `は生きる手である
  8. `よくよく心得るべきものである