一〇(一九四)秦始皇天竺より自ら来たる僧禁獄の事

現代語訳

  1. `昔、秦の始皇帝の時代、天竺から僧が渡ってきた
  2. `帝は怪しまれ
  3. `おまえは何者だ
  4. `なんのために来たのか
  5. `僧が
  6. `釈迦牟尼仏の御弟子です
  7. `仏法を伝えるため、はるか西天より渡ってきました
  8. `と答えると、帝は、ご立腹になり
  9. `その姿、実に怪しい
  10. `頭は禿げている
  11. `衣の体も人と違う
  12. `仏の御弟子
  13. `と名乗る
  14. `仏とは何者か
  15. `おまえは怪しい者だ
  16. `そのまま帰してはならぬ
  17. `牢獄に閉じ込めよ
  18. `これから後、このような怪しいことを言う者は殺してしまえ
  19. `と言い、牢獄にお繋ぎになった
  20. `厳重に閉じ込めて、きつく縛っておけ
  21. `と宣旨を下された
  1. `牢屋の役人は、宣旨のままに、重罪を犯した者を入れる所へ閉じ込め、戸に多くの錠をかけた
  2. `この僧は
  3. `悪王に会い、このように悲しい目に遭っております
  4. `我が師、釈迦如来、入滅の後なりともあらたかにご覧でしょう
  5. `どうか私をお助けください
  6. `と念じると、釈迦仏が丈六の姿で、紫磨黄金の光を放ちつつ空から飛んで来られて、獄門を踏み破り、この僧を取って去られた
  7. `そのついでに、多くの盗人どもも皆逃げ去った
  8. `獄の役人は、空で何かが鳴っているので出て見ると、丈六の金色の僧が光を放ちながら獄の門を踏み破り、閉じ込められた天竺の僧を取って行く音だったので、この由を奏上すると、帝はひどく恐れられたという
  9. `そのときに伝わろうとしていた仏法が、時代が移り、漢には伝わったのである