現代語訳
橋ほめ
門ほめ
○
小島ぶし
- `一小島では 檜椹で 門立てて、これぞめでたい 白金の門
- `一白金の門 扉押し開き 見申せや、新の御世だい四
- `一八つ棟造りに 檜皮葺の、上に生いたる唐松
- `一唐松の みぎり左に 涌く泉、汲めども呑めども つきひざるもの
- `一朝日差す 夕日輝く 大寺なり、桜色の 稚児は百人
- `一天から落つる 千代硯水、まつて五立たれる
馬屋ほめ
- `一参り来て この御台所 見申せや、雌釜雄釜に 釜は十六
- `一十六の釜で 御台炊く時は、四十八の馬で 朝草刈る
- `一その馬で 朝草に 桔梗小萱を 刈り混ぜて、花で輝く 厩なり
- `一輝く中の 鹿毛駒は、世帯上がれと 足掻きする
○
枡形ほめ
町ほめ
けんだんほめ
- `一参り来て この検断様を 見申せや、御町真ん中に 旗を立て前
- `一まい六は立町 油町
- `一検断殿は 二階座敷に 昼寝して、銭を枕に 金の手遊び
- `一参り来て この御札見申せば、御師が色づけ あるまじき札
- `一高き所は 城と申し、低き所は 城下と申すなり
橋ほめ
- `一参り来て この橋を 見申せば、黄金の辻に 白金の橋
上ほめ
家ほめ
浪合
- `一この庭に 歌の上手は ありと聞く、歌えながらも 心恥ずかし
- `一おんげんべり こおらいべり六、山と花茣蓙 これの御庭へ さらさら敷かれ
- `一蒔絵の台に 玉の盃 寄り据えて、これの御庭へ 直し置く
- `一十七は 銚子 提子 御手に持ち お酌回しゃ 御庭輝く
- `一この御酒 ひとつ引き受け 給るなら、命長く 寿命栄える
- `一魚には 鯛も鱸も ござれども、音に聞こえし 唐の唐梅
- `一頌詞申しゃ 限りなし、一礼申して 立てや友たつ、京
柱懸り
- `一仲立ち入れよや 仲入れろ、仲立ちなけりゃ 庭は素気ない 庭は素気ない
- `一すかの子七は 生まれておりりゃ 山めぐる、我らもめぐる 庭めぐる 庭めぐる
- `一これの御庭 匂い柱の 立つときは、ちのみがき八 若くなるもの 若くなるもの
- `一松島の 松を育てて 見んとすれば、松に絡まる ちた九の似非物 蔦の似非物
- `一松島の 松に絡まる 蔦の葉も、縁がなけりゃ ぶろり解れる ぶろり解れる
- `一京で九貫の 唐絵のびよぼ一〇、三四重にさらり 立て回す
めずすぐり一一
- `一仲立ち入れろや 仲入れろ、仲立ちなけりゃ 庭素気ない 庭素気ない
- `一鹿の子は 生まれおりりゃ 山めぐる、我らもめぐる 庭をめぐるよ 庭をめぐるよ
- `一女鹿訪ねて 行かんとして一二 白山の御山 霞かかる 霞かかる
- `一うるすやな一三 風は霞を 吹き払って、今こそ女鹿 分けて訪ねる 分けて訪ねる
- `一なんと女鹿は 隠れても 一叢薄 分けて訪ねる 分けて訪ねる
- `一笹の木の葉の 女鹿子は、なんと隠れても 誘き出ださる
- `一女鹿大鹿 振りを見ろ、鹿の心 都なるもの 都なるもの
- `一奥の深山の 大鹿は 今年初めて 踊りでき候 踊りでき候
- `一女鹿取られて あうがれて八 心じくす九 くおろ一〇鹿かな くおろ鹿かな
- `一松島の 松を育てて 見んとすれば 松に絡まる 蔦の似非物 蔦の似非物
- `一松島の 松に絡まる 蔦の葉も、縁がなけりゃ ぞろり解れる ぞろり解れる
- `一沖の途中の 浜千鳥、ゆらり漕がれる そろり発つもの そろり発つもの
なげくさ
- `一なげくさを 如何な御人は 御出しあった、出した御人は 心ありがたい
- `一この台を 如何な大工は 御指しあった、四つ角で 宝遊ばし 宝遊ばし
- `一この御酒を 如何な御酒だと 思し召す、音に聞こえし 加賀菊の酒 加賀菊の酒
- `一この銭を 如何な銭だと 思し召す、伊勢お初散銭 熊野参りの 使い余りか 使い余りか
- `一この紙を 如何な紙と 思し召す、はりまだんぜ一四か 鹿島紙か、折り目に沿うた ひ一一遊ばし
- `一扇の御所 いぢくなり一五、扇の御所 三内の宮、内で締めるは 要なり 要なり、折り目に沿うて重なる
注釈
本集による注釈
歌は不明な点が多いため、訳は解釈の補助程度に読んでください。