七五山女

現代語訳

  1. `離森の長者屋敷には、この数年前まで燐寸軸木の工場があった
  2. `その小屋の戸口に、夜になると女が窺い寄り、人を見てげたげたと笑う者があって、寂しさに堪えきれず、ついに工場を大字山口に移した
  3. `その後、また同じ山中に、枕木伐り出しのために小屋を作った者がいたが、夕方になると人夫の者がどこかへ迷い行き、帰って後は茫然としていることがしばしばあった
  4. `このような人夫が四・五人もいて、その後も絶えず、どこへか出て行くことがあった
  5. `この者たちが後に言うのを聞けば、女が来てどこへか連れ出す
  6. `帰って後は、二日も三日もなにも覚えていないという