六五姥神

原文

  1. `早池峰は御影石の山なり
  2. `此山の小国に向きたるに阿倍ケ城と云ふ岩あり
  3. `険しき崖の中程にありて、人などはとても行き得べき処に非ず
  4. `ここには今でも阿倍貞任の母住めりと言伝ふ
  5. `雨の降るべき夕方など、岩屋の扉を鎖す音聞ゆと云ふ
  6. `小国、附馬牛の人々は、
  7. `阿倍ケ城の錠の音がする、明日は雨ならん
  8. `など云ふ