二八立石寺

現代語訳

`山形藩領に立石寺という山寺がある
`慈覚大師・円仁の開山した実に清閑な地である
`一見すべきと人々が勧めるので、尾花沢より取って返し、その距離七里ほどあった
`日はまだ高い
`麓の坊に宿を借りておき、山上の堂に登る
`岩を幾重にも重ねて山とし、常緑樹は年輪を重ね、土石は古びて滑らかに苔生し、岩上に建つ幾宇もの院は扉を閉じて物音ひとつ聞こえない
`崖縁の周囲を通り、岩を這って仏閣を拝み、美しい風景は物寂しくひっそりとしていて、心が澄んでゆくのみを感じる
`閑かさや岩に染み入る蝉の声