現代語訳
- `平泉へ向かう義経らが岩に馬の鐙を擦ったという鐙摺の細道、白石の城を過ぎ、名取の郡に入って、
- `藤中将・藤原実方が陸奥守の時、この辺りにある道祖神の前を下馬せず横切ったところ、罰が当たって、馬が死に、その馬の下敷きになって死んだという話があるが、彼の塚はどのあたりだろうか
- `と人に問うと、
- `ここから遥か右に見える山際の里が蓑輪と笠島だが、道祖神社も、西行法師が実方を詠んだ朽ちもせぬ その名ばかりを とめおきて 枯野の薄 形見にぞ見るという歌にある形見の薄も、まだ残っている
- `と教えてくれた
- `この頃の五月雨で道がひどくぬかるみ、体も疲れているので、遠くから眺めて通り過ぎると、
- `蓑輪の箕も、笠島の笠も、この五月雨にふさわしい
- `と思われて、
- `笠島は いずこ五月の ぬかり道
- `奥州街道第六十六番目の宿・岩沼に泊まる