雲巌寺

現代語訳

  1. `この下野国黒羽・雲寺の奥に、我が禅師・仏頂和尚の山居の跡がある
  2. `縦横の 五尺に足らぬ 草の庵 結ぶも悔し 雨なかりせば
  3. `と松の炭で岩に書きつけましてな
  4. `と、いつであったか仰っていた
  5. `その跡を見ようと雲寺へ杖つき向かえば、人々は進んで誘い合い、若い人も多く、道すがら賑やかだったので、気づかぬうちにその麓に着いていた
  6. `山は奥深い雰囲気で、谷沿いの道は遥かに延び、松や杉は黒く苔生して、四月の空は今なお寒々としていた
  7. `雲巌寺の十景が尽きる所に架かる橋を渡って山門に入る
  1. `さて、かの跡はどのあたりだろうか
  2. `と、後ろの山によじ登れば、岩の上の小さな庵が岩窟にもたれるように結ばれていた
  3. `宋の妙禅師が籠もった天目山の張公洞・死関や梁の法雲法師の籠もった石室を見る思いであった
  4. `木啄は破らず 夏木立
  5. `と、とりあえず一句を柱に残した