(三四)藤大納言忠家物言ふ女放屁の事

現代語訳

  1. `昔、藤大納言忠家という人が、まだ殿上人であった頃、美しく色好みといわれた女と語らううち、夜が更け、月が昼よりも明るみ、たえかねて、御簾を被り、長押の上へ登り、肩に手をかけて引き寄せると、乱れ髪が顔を覆い
  2. `ああひどい
  3. `と言って、身悶えしたとき、大きな屁をひった
  4. `女は、ものも言えず、くたくたとなって臥せってしまった
  5. `この大納言は
  6. `いやな目に遭ったものだ
  7. `世間にいてもつまらない
  8. `出家しよう
  9. `と、御簾の裾を少しかきあげて、抜き足をして
  10. `本気で出家しよう
  11. `と思い、二間ばかり行くうち
  12. `だいたい、その女が過ちをしたんだから、出家する必要もなかろう
  13. `という気持ちがまた起こり、そのまま走り去ってしまった
  14. `女がどうなってしまったかはわからないという