一 他流に於てつよみの太刀と云事

原文

  1. `太刀に
  2. `つよき太刀
  3. `よわき太刀
  4. `と云事は有べからず
  5. `つよき心にてふる太刀はあらきもの也
  6. `あらきにては勝がたし
  7. `
  8. `つよき太刀
  9. `と云て人をきる時にしてむりにつよくきらんとすればきれざる心也
  10. `ためしものなどにきる心にもつよくきらんとする事あしし
  11. `誰に於てもかたきときりあふに
  12. `よわくきらん
  13. `つよくきらん
  14. `と思ふものなし
  15. `唯人を
  16. `きりころさん
  17. `と思ふ時はつよき心もあらず勿論よわき心にもあらず
  18. `敵のしぬる程
  19. `と思ふ儀也
  20. `はつよみの太刀にて人の太刀つよくはればはりあまりて必あしき心也
  21. `人の太刀に強くあたれば我太刀もおれくだくる所也
  22. `然るによつてつよみの太刀などど云事なき事也
  23. `大分の兵法にしてもつよき人数を持合戦に於て
  24. `つよくかたん
  25. `と思へば敵もつよき人を持戦も
  26. `つよくせん
  27. `と思ふ
  28. `それはいづれも同じ事也
  29. `物毎に勝と云事道理なくしては勝事あたはず
  30. `我道に於ては少も無理なる事を思はず兵法の智力を以て如何様にも勝所を得る心也
  31. `能々工夫有べし