一二 一 かげをおさふると云事

原文

  1. `影をおさふる
  2. `と云は
  3. `敵のかたよりしかくる心の見えたる時の事也
  4. `大分の兵法にしては敵のわざをせんとする所を
  5. `おさふる
  6. `と云ひて我方より其利をおさふる所を敵に強く見すれば強きにおされて敵の心替る事也
  7. `我も心をちがへてなる心よりをしかけて勝所也
  8. `一分の兵法にしても敵のおこる強き気ざしを利の拍子を以てやめさせやみたる拍子に我利をうけてをしかくるもの也
  9. `能々工夫有べし