一一一四六樵夫の小童隠題の歌詠む事
現代語訳
- `昔、隠し題をむやみに出したがる帝がおられ、ひちりきを題に詠ませられたものの、人々の歌が下手だったので、木こりの少年が、朝、山へ行くときに
- `先日篳篥の題が出たけれど、みんな読めなかったそうだよ
- `自分なら詠めたのに
- `と言うと、共に出かけた少年が
- `そんな向こう見ずなことを言うな
- `身の程もわきまえないで
- `と言うので
- `どうして身の程知らずだなんて決めつけるんだ
- `と言い
- `めぐり来る、春々ごとに桜花いくたびちりき人に問いたい
- `と詠んだ
- `木こりの少年の分際で、思いがけぬものである