一〇七九ある僧人の許にて氷魚盗み食ひたる事

現代語訳

  1. `これも昔の話、ある僧が人のもとへ行った
  2. `主は、酒などを勧め、氷魚が初めて手に入ったので、珍しく思い、出してもてなした
  3. `主は用事があって、奥へ入り、再び出てくると、この氷魚がめっきり減っていたので
  4. `これはなんと
  5. `と思ったが、言いようもないので、雑談などしていると、この僧の鼻の穴から氷魚が一匹ふと出てきたので、主は奇妙に思い
  6. `そのお鼻から氷魚が出ているのはどういうわけですか
  7. `と訊くと、すかさず
  8. `この頃の氷魚は、目や鼻から出てくるものなのです
  9. `と答えたので、皆
  10. `わはは
  11. `と笑った