現代語訳 `昔、藤六という歌詠みがいた `人のいないのを見計らい、下賤の者の家に入った `鍋にある物をすくって食べていると、家の主人の女が水を汲み、大路の方からやって来て見ると、こんなふうにすくって食べているので `どうしてこんな人もいない所に入って、こんなことやってるんですか `あらこれはびっくり、藤六さんじゃありませんか `それなら歌をお詠みなさい `と言うので `昔から阿弥陀仏の誓いのとおり、煮られるものはすくうものだと覚えてきたから `と詠んだのだった