九七魂の行方

現代語訳

  1. `飯豊の菊池松之丞という人、急性熱病を患い、たびたび呼吸困難になったとき、
  2. `自分は田んぼに出て、菩提寺の喜清院へ急いで行こうとする
  3. `足に少し力を入れたが、不意に空中に飛び上り、およそ人の頭ほどのところを次第に前下りに行き、また少し力を入れると、始めのように昇った
  4. `えも言われず心地よい
  5. `寺の門に近づくと人が大勢集まっている
  6. `どうしたんだろう
  7. `と怪しみつつ門を入れば、紅の芥子の花が見渡す限り咲き満ちている
  8. `いよいよ心地よい
  9. `この花の間に、亡くなった父が立っている
  10. `お前も来たのか
  11. `と言う
  12. `これに何か返事をしながら、さらに行くと、以前亡くした男の子がいて、
  13. `トッチャお前も来たか
  14. `と言う
  15. `お前はここにいたのか
  16. `と言いつつ近寄ろうとすれば、
  17. `今来てはいけない
  18. `と言う
  19. `このとき、門のあたりで騒がしく自分の名を呼ぶ者がいて、うるさいことこの上ないが、仕方がないので、心も重くいやいやながら引き返したと思ったら、正気づいた
  1. `親族の者が寄り集まって、水など注ぎ掛けて呼び戻したのである