八八魂の行方

現代語訳

  1. `これも似た話である
  2. `土淵村大字土淵常堅寺は曹洞宗で、遠野郷十二ヶ寺の触頭である
  3. `ある日の夕方に、村人の何某という者が本宿から来る道で何某という老人に会った
  4. `この老人はかねてより大病を煩っている者だったので、
  5. `いつの間によくなったのか
  6. `と問うと、
  7. `二・三日気分もいいので、今日は寺へ話を聞きに行こうと
  8. `と言い、寺の門前でまた言葉をかけ合って別れた
  9. `常堅寺でも、和尚はこの老人が訪ね来たので、出迎え、茶を勧め、しばらく話をして帰る
  10. `これも小僧に見に行かせると、門の外で見えなくなったので、驚いて和尚に語れば、よく見るとまた茶は畳の間にこぼしてあって、老人はその日世を去った