一五家の神 - オクナイサマ

現代語訳

  1. `オクナイサマを祀れば幸いが多い
  2. `土淵村大字柏崎の長者・阿部氏、村では田んぼのと呼ぶ
  1. `この家である年、田植の人手が足らず、明日は空模様も怪しく、
  2. `少しばかり田を植え残すことになりそうだ
  3. `などとつぶやいているところへ、ふと、どこからともなく背の低い小僧がひとり現れて、
  4. `おらも手伝いしよう
  5. `と言うので、任せて働かせておき、昼食時に飯を食わせようと探したところが見当たらない
  6. `やがて再び戻ってきて、一日中を掻き、よく働いてくれたので、その日のうちに植え終えることができた
  7. `どこの人かは知らないが、晩には来て物を食べなされ
  8. `と誘ったが、日が暮れると、またその姿がない
  9. `家に帰ってみれば、縁側に小さい泥の足跡がたくさんあって、だんだんに座敷に入り、オクナイサマの神棚の所で止まっていたので、さては、と思ってその扉を開いて見れば、神像の腰から下は田の泥にまみれてしたという