一〇九雨風祭

原文

  1. `盆の頃には雨風祭とて藁にて人よりも大なる人形を作り、道のに送り行きて立つ
  2. `紙にて顔を描き瓜にて陰陽の形を作り添へなどす
  3. `虫祭の藁人形にはかかることは無くその形も小さし
  4. `雨風祭の折は一部落の中にて頭屋を択び定め、里人集りて酒を飲みて後、一同笛太鼓にて之を道の辻まで送り行くなり
  5. `笛の中には桐の木にて作りたるホラなどあり
  6. `之を高く吹く
  7. `さて其折の歌は
  8. `二百十日の雨風まつるよ、どちの方さ祭る、北の方さ祭る
  9. `と云ふ

注釈

`東国輿地勝覧によれば韓国にても厲壇を必ず城の北方に作ること見ゆ。共に玄武神の信仰より来れるなるべし