五一色々の鳥

原文

  1. `山には様々の鳥住めど、最も寂しき声の鳥はオツト鳥なり
  2. `夏の夜中に啼く
  3. `浜の大槌より駄賃付の者など峠を越えれば、遥に谷底にて其声を聞くと云へり
  1. `昔ある長者の娘あり
  2. `又ある長者の男の子と親しみ、山に行きて遊びしに、男見えずなりたり
  3. `夕暮になり夜になるまで探しあるきしが、之を見つくることを得ずして、に此鳥になりたりと云ふ
  1. `オツトーン、オツトーン
  2. `と云ふは夫のことなり
  3. `末の方かすれてあはれなる鳴声なり