四一

原文

  1. `和野の佐々木嘉兵衛、或年境木越の大谷地へ狩にゆきたり
  2. `死助の方より走れる原なり
  3. `秋の暮のことにて木の葉は散り尽し山もあらは也
  4. `の峰より何百とも知れぬ狼此方へ群れて走り来るを見て恐ろしさに堪へず、樹の梢に上りてありしに、其樹の下を夥しき足音して走り過ぎ北の方へ行けり
  5. `その頃より遠野郷には狼甚だ少なくなれりとのことなり