二三まぼろし

原文

  1. `同じ人の二七日逮夜に、知音の者集りて、夜更くるまで念仏を唱へ立帰らんとする時、門口の石に腰掛けてあちらを向ける老女あり
  2. `其うしろしく亡くなりし人の通りなりき
  3. `は数多の人見たる故に誰も疑はず
  1. `如何なる執著のありしにや、に知る人はなかりし也