一四家の神 - オクナイサマ、小正月の行事

原文

  1. `部落には必ず一戸の旧家ありて、オクナイサマと云ふ神を祀る
  2. `其家をば大同と云ふ
  3. `此神の像は桑の木を削りて顔を描き、四角なる布の真中に穴を明け、之を上より通して衣裳とす
  4. `正月の十五日には小字中の人々此家に集り来りて之を祭る
  1. `又オシラサマと云ふ神あり
  2. `此神の像も亦同じやうにして造り設け、これも正月の十五日に里人集りて之を祭る
  3. `其式には白粉を神像の顔に塗ることあり
  1. `大同の家には必ず畳一帖のあり
  2. `此部屋にて夜寝る者はいつも不思議に遭ふ
  3. `枕を反すなどは常のことなり
  4. `或は誰かに抱起され、又は室より突きさるることもあり
  5. `凡そ静かに眠ることを許さぬなり

注釈

`オシラサマは双神なり。アイヌの中にも此神あること蝦夷風俗彙聞に見ゆ
`羽後刈和野の町にて市の神の神体なる陰陽の神に正月十五日白粉を塗りて祭ることあり。これと似たる例なり