素龍書 跋

現代語訳

  1. `枯寂なのも、艶やかなのも、逞しいのも、儚いのも、
  2. `奥の細道
  3. `を読み進めてゆくと、思わず立って手を叩き、伏して臓物を刻むほどに感動する
  4. `一方ではを着て
  5. `こんな旅をしてみたい
  6. `と思い立ち、一方では、座して眼前に奇景を見た気になって心満ちてしまう
  7. `こうしてたくさんの旅情に人を誘い、南海に棲むという人魚・鮫人目から零れる涙は玉を成すがごとく、彼の筆は珠玉の文章を綴った
  8. `旅の成せる業である
  9. `器量の成せる業である
  10. `ただ嘆かわしいのは、このような人物が、実に弱々しくて、眉が白くなっていることである
  11. `元禄七年初夏
  12. `柏木素龍書