一七 笠島

現代語訳

  1. `平泉へ向かう義経らが岩に馬の鐙を擦ったという鐙摺の細道、白石の城を過ぎ、名取の郡に入って、
  2. `藤中将・藤原実方が陸奥守の時、この辺りにある道祖神の前を下馬せず横切ったところ、罰が当たって、馬が死に、その馬の下敷きになって死んだという話があるが、彼の塚はどのあたりだろうか
  3. `と人に問うと、
  4. `ここから遥か右に見える山際の里が蓑輪と笠島だが、道祖神社も、西行法師が実方を詠んだ朽ちもせぬ その名ばかりを とめおきて 枯野の薄 形見にぞ見るという歌にある形見のも、まだ残っている
  5. `と教えてくれた
  6. `この頃の五月雨で道がひどくぬかるみ、体も疲れているので、遠くから眺めて通り過ぎると、
  7. `蓑輪の箕も、笠島の笠も、この五月雨にふさわしい
  8. `と思われて、
  9. `笠島は いずこ五月の ぬかり道
  1. `奥州街道第六十六番目の宿・岩沼に泊まる